中立金利とは(水準と計算・調べ方をわかりやすく解説)|株初心者のための株式投資と相場分析方法
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中立金利とは・政策金利や潜在成長率との関係や見方や水準、調べ方

中立金利


中立金利とは

中立金利(読み方:ちゅうりつきんり|英語:neutral rate of interest)とは、景気に対して中立的な(景気を刺激も抑制もしない)貯蓄と投資を均衡させる名目金利です(名目ベースの自然利子率です)。



中立金利の推移(チャート含む)

米国(アメリカ)の中立金利の推移は、姉妹サイト「株式マーケットデータ」の以下のページで掲載しています。



自然利子率との違い

自然利子率とは、1898年にスウェーデンの経済学者クヌート・ビクセル氏が考案した概念で、経済や物価に対して緩和的でも引き締め的でもない利子率(実質金利)の水準です。需給(需要と供給)が均衡し、完全雇用のもと、インフレもデフレも過度に起こさずに順調に経済が成長していく金利水準のことをいいます。

利子率には「名目」と「実質」があり、緩和的でも引き締め的でもない実質利子率(実質金利)が自然利子率です。一方、貯蓄と投資を均衡させる名目利子率(名目金利)が中立金利です。ただし、需給が均衡し中立的な金利であることから、自然利子率のことを「中立金利」という場合もあります。



中立金利は潜在成長率に連動する

中立金利は、「潜在成長率」に連動するとされています。潜在成長率は、潜在的にどれだけ成長できる力があるかを示す指標で、資本や生産性、労働力を目一杯利用した時に達成できる仮想の成長率です。実際の経済成長率が潜在成長率に達しない場合は、不景気と判断されます。日本の場合は2%程度とされており、日本は経済成長率が1%前後で推移していて、潜在成長率2%に達していませんので不景気と判断されます。



中立金利の水準(中立金利が低い・高い、その意味)

中立金利は資金の需給(重要と供給)によって変化し、安全資産へ資金が向かっている場合や、成長率・生産性が低下しているなどの場合は中立金利が低下しやすく、上昇している場合は上昇しやすいです。

中立金利が低ければ、景気が後退した場合に政策金利を引き下げても(利下げしても)効果が薄くなります。ゆえに、長期的な潜在成長率を高める財政や規制緩和の政策が必要とされています。

政策金利は、各国の中央銀行(その国の金融機構の中核となる銀行)が決定する短期の金利誘導水準のことです。日本であれば日本の中央銀行である「日本銀行(日銀)」が、市場の金利を実態経済に合わせた水準に誘導するために引き上げたり引き下げたりしています。

米国の中立金利はテイラールールが意識されやすく、テイラールールでは完全雇用状態にある場合の実質の中立金利は2%程度、目標インフレ率の2%で調整する前の名目の中立金利は4%程度とされています。

テイラールールは、政策金利の適正な水準をインフレーション(持続的な物価上昇)やGDPなどマクロの経済指標によって定める関係式です。テイラールールでは、政策金利は、インフレ率+中立金利+α(インフレ率ー目標インフレ率)+β(GDP成長率ー潜在成長率)÷2で表されます。この場合の「α」と「β」は、正の値を取る定数です。



政策金利と中立金利の関係・その目安

政策金利の長期的な均衡水準は「中立金利+目標インフレ率」とされています。政策金利の長期的な均衡水準は、FOMC(米国の中央銀行制度の最高意思決定機関である「FRB(連邦準備制度理事会)」が開催する米国の金融政策の最高意思決定機関)における「長期的な政策金利見通し(中央値)」が目安となります。

中立金利は、例えばFOMCにおいて「長期的な政策金利見通し」が3%であったとして、目標インフレ率が2%であったなら、FOMCが想定する中立金利は1%となります。中立金利の水準が低いと政策金利の均衡水準も低くなり、政策金利の引き上げは限定的になります。中立金利が低い状況(潜在成長率が低い状況)で政策金利の引き上げ(利上げ)をどんどん進めれば、景気を一気に冷やす可能性があります。



中立金利の調べ方

政策金利の長期的な均衡水準は、FOMCにおける「長期的な政策金利見通し(中央値)」が目安となりますので、想定されている中立金利を調べるには、まずそれを見る必要があります。

FOMCにおける「長期的な政策金利見通し(中央値)」は、FOMCメンバーが適切と考える米国の政策金利「FFレート(米国の短期金利の指標となる金利)」の誘導目標の水準をドット(点)の分布で示した散布図「ドット・チャート」の「FF金利の予想分布」を見ます。

「FF金利の予想分布」は、姉妹サイトの「株式マーケットデータ」の以下の「FF金利の予想分布(ドットチャートより)・中立金利・米経済見通し(FOMC)」のページで確認できますので参照してください。




例えば、上記「株式マーケットデータ」の「FF金利の予想分布(ドットチャートより)・中立金利・米経済見通し(FOMC)」のページの”2017年6月時点”を参考に解説すると、



2017年6月時点において、FOMCは「長期的な政策金利見通し」を3.000%と想定していることを示しています。”19年末”の中央値の欄が”3.000%”となっていると思いますが、それがこの時点の「長期的な政策金利見通し」です。

この「長期的な政策金利見通し」は、FRBが想定している”名目”でみた中立金利を示しています。”名目の中立金利”とは、物価を加味していない中立金利ということです。
この時点において、FRBの目標インフレ率が”2.000%”であるとするならば、”実質”の中立金利は「3.000%−2.000%」で”1%”ということになります。”実質の中立金利”とは、物価を加味した中立金利ということです。

これらを踏まえてもう少し解説すると、例えば今後のFOMCで「19年末に実質の中立金利は1%にはならない、0.5%ぐらいじゃないか?」ということになると、以後のFOMCで「長期的な政策金利見通し」が”2.500%”に引き下げられることになります。

ちなみに、FOMCが公表しているこういった「政策金利見通し」は、すべて短期金利の見通しを示しています。なぜなら、政策金利で誘導するのは短期金利であるからです。

短期金利というのは、お金を貸し出す期間が1年未満の場合に適用される金利(資金の貸借料・使用料。金利を簡単に言えばお金のレンタル料です)のことです。お金を貸し出す期間が1年以上の場合に適用される金利は「長期金利」といいます。



米国(アメリカ)の中立金利の推移とチャート

姉妹サイト「株式マーケットデータ」では、米国の自然利子率と期待インフレ率から算出される中立金利の推移(時系列とチャート)も掲載していますので参照してください。



中立金利と実質金利の関係と景気

  • 実質金利が中立金利を上回ると景気抑制
  • 実質金利が中立金利を下回ると景気刺激


中立金利の中央値と予想レンジ(FRB)

[追記]
姉妹サイトの「株式マーケットデータ」の「FF金利の予想分布(ドットチャートより)・中立金利・米経済見通し(FOMC)」のページで、FRBが公表している中立金利の中央値推定レンジの掲載を開始しました。この欄を見れば、FRBが推定している中立金利の水準がひと目でわかります。

例えば、2019年12月時点であれば




FRBは中立金利の中央値を「2.5%」、中立金利の推定レンジを「2.0-3.3%」と推定しているということです。



動画で解説ーYouTubeー



YouTubeで動画で解説も行っています。



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