中国の自国通貨は「人民元(じんみんげん)」で、人民元相場の起点となっているのは対米ドルです。中国の経済が悪化し、中国が景気対策のために人民元(対米ドル)を切り下げる政策をしたり、米ドル高になるなどして人民元が安くなれば、中国の輸出は刺激され増加しやすくなります。中国の輸出が増加すれば中国経済は安定しやすくなりますし、中国経済が安定すれば世界経済の安定にもつながりやすくなります。 ただし、人民元安が行き過ぎればデメリットが出てきます。というのも、人民元が安くなれば中国の企業は輸出すれば為替益が出て儲かりますので中国の輸出が増えます。中国の輸出品は低価格商品が多いので、中国の輸出が増えるということは世界的に低価格商品が増えることを意味し、世界的にデフレ圧力がかかってしまいます。 また、人民元安は中国と競合している東南アジア諸国との通貨安競争に発展しやすくなり、東南アジア諸国で通貨安が加速しやすくなります。通貨安が加速すれば、中国にとっても東南アジア諸国にとっても輸出は増加しても自国から資本が流出することとなりますし、外貨建てで債務を持っている不動産会社などは債務不履行につながりやすくなります。輸出より資本流出の方が大きくなれば国の経常収支が悪化し、深刻な経済危機に発展しやすくなりますので注意が必要です。
人民元安は日本企業の業績にも影響してきます。人民元が対円で下落すれば、中国で事業をしている企業は収益が円換算で目減りしてしまいます。また、人民元安は中国企業の輸出での競争力を上げることになるので、日本企業にとっては価格競争の面で不利に働きやすくなります。また、人民元安は中国と競合している東南アジア諸国との通貨安競争を招く恐れがあるため、東南アジア諸国で通貨安が加速すれば、人民元安同様に東南アジア諸国の企業の輸出の競争力が上がり、日本企業にとっては不利に働きやすくなります。 さらに、人民元安は日本の内需で稼ぐ企業にとっても影響が出てくることがあります。対円で人民元安が進めば円の価値が上がってしまう(円高)ため、日本に来たい中国人観光客が減少する要因となります。日本国内での中国人観光客の購買意欲も下がってしまうため、インバウンドの面で影響が懸念されます。
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