TLTRO(読み方:「テルトロ」または「ティーエルトロ」|英語:Targeted Longer Term Refinancing Operation)とは、貸出の条件がついた長期資金供給オペレーションで、ECB(欧州中央銀行)による長期資金供給の金融政策のことです。つまり、貸出実績に応じてECBが銀行に直接資金を供給する方策です。 |
マイナス金利は、銀行の収益悪化の要因となっています。銀行からの批判は高まっており、それを緩和するための措置としてTLTROが使われる可能性があります。銀行がTLTROで借入た資金に0%以上の金利を付ければ、一定程度の措置として有効になる可能性があります。
過去、2014年にTLTRO1、2016年にTLTRO2が実施され、残高は約7300億ユーロとなっています。それらは、2020年6月から21年3月までにすべて満期を迎えます。
2019年1月末時点の主要国の銀行によるTLTROの利用状況は、
となっています。イタリアとスペインの銀行がTLTROを多く借りていることがわかります。ユーロ圏でのイタリアのGDPの比率は11%程度ですので、その面から見てもTLTROはイタリア向けの政策とも見られています。
2019年3月7日、ECBはECB理事会で、景気減速を理由に利上げの先送りとともに、景気対策の一環として2019年9月から新たにTLTROの第3弾「TLTRO3」を開始することを決めました。2021年3月までの期間限定で償還期限2年の低利資金を銀行に供給し、企業や家計にお金が行き渡るようにするとしています。それまでのTLTOROの残高は約7300億ユーロで、2020年6月以降に満期を迎えるため、TLTRO3によって銀行の資金繰りに不安が生じないようにする狙いがあります。
背景としては、イタリアやスペインの銀行の事業法人向けの貸出が落ちており、スペインはやや改善しているものの、イタリアは不良債権を多く抱えていて(9%程度と見られている)、その処理は進んでおらず、需要の低迷や貸し渋りが多く出ていると見られるため、TLTRO3は、実際にはイタリアの銀行の救済向けの政策と考える見方が多いです。ただし、根本的にはイタリアの不良債権が問題ですので、TLTROだけでは貸出を伸ばすことはできないとの見方があります。
2019年6月6日、ECB理事会で、TLTRO3はマイナス金利でも資金を貸し出すことを決定しました。低金利の資金を銀行に供給することによって、企業や家計に資金が行き渡りやすくする狙いとしています。
TLTRO3の条件は以下。
顧客向け貸出資金を銀行に供与する |
実施回数は19年9月から21年3月までで合計7回 |
資金の供与期間は最長2年 |
利回りは0.1%から-0.3% |
利回りが「-0.3%」となっており、貸出を多くした銀行は金利がもらえる、つまり補助金がもらえるような仕組みとなっています。
2019年9月12日、ECBはECB理事会で包括的な金融緩和策を決定しました。短期金利の指標となる主要政策金利をゼロ%に据え置く一方、預金ファシリティ金利のマイナス金利を0.1%深堀し-0.5%とし、対象を一部に限定する階層構造も導入するとしました。量的緩和政策(QE)の再開も決定し、国債などを月額200億ユーロのペースで11月から買い入れるとしました。期間については利上げを始める直前までとし、フォワード・ガイダンスも変更。政策金利を現状かより低い水準に「インフレ見通しが2%近くという物価目標に確実に近づくまで」としました。そして、9月に始めるTLTRO3も、期間を2年から3年に延ばすとしました。
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