PERは根本的に曖昧な株価指標ですが、金融市場にショック的な動きが出ていない場合は、PERに関する投資家のコンセンサスはある程度かたまりますので、その場合はPERを判断材料とした投資も成功する確率が上がりやすくなります。その場合、低PER、つまりPERが低い銘柄(割安株)というのは、株価が割安なので投資するにはいい銘柄となるのですが、低PERでも投資しない方がいい銘柄はあります。銘柄の見つけ方のヒントにもなりますので、以下で紹介します。
@PERが極端に低い銘柄 |
PERが5倍以下で放置されている銘柄は、極端に低PERになっている銘柄なので、投資するには注 意が必要です。そもそも低PERで放置される銘柄というのは、それだけの理由があってその状態で放置されているということです。ですので、極端な低PER銘柄は、まず疑ってかからなければなりません。今後の業績の悪化が見込まれているため、今が低PERでも今後を考えれば割高だと判断されているのかもしれませんし、一時的な特別利益(土地の売却等)によって低PERになったのかもしれません。または、その銘柄特有の事情で低PERで放置されることとなっているかもしれませんので、PERが5倍以下の銘柄は投資対象から外すべきでしょう。 |
A経常利益率が低い銘柄 |
低PERでも、経常利益率が低い銘柄は投資対象から外すべきでしょう。経常利益率が下がっていたら営業外費用が増加しており、経常利益率が1%以下の銘柄は、景気が少し悪くなれば即赤字に転落してしまう可能性が高いです。 |
B自己資本比率が低い銘柄 |
低PERでも自己資本比率が低い銘柄は投資対象から外すべきでしょう。経営破綻する企業は、自己資本比率が20%以下であることが多いので(ただし、銀行は8%あれば安心できる水準とされています)。 |
PERとはPERとは、「株価収益率」と呼ばれ、株価をEPS(1株当たり利益)で割って計算されるものです。 |
PERはあくまでも相対的なものなので、何倍が妥当な水準であるかといった基準はありません。PERの妥当な水準は、その時々のマーケットの環境によって変わるものです。ゆえに、PERの数字だけを見て20倍以下なら割安だ!というような判断は正しくないです。 PERが20倍以下なら割安だ!と言われていた時代もあれば、16倍以上なら割高だ!と言われる時代もあるのです。また、PERは業種や個々の銘柄によって、妥当な水準は違うものなので注意が必要です。
そもそもPERというのは、かなり曖昧な株価指標です。PERとは、その株式がEPS(1株当たり利益)の何倍まで買われているかを示す株価指標なのですが、なぜEPSの何倍かの価値を株式市場に参加する投資家はその株式につけるのでしょうか?企業が利益のうちから出す配当を上げれば配当利回りが上がるので、PERが低ければ割安!と判断されることもありますが、企業の利益は一定程度留保金などに回しておかなければ、いざという時に経営が困難になりますので、配当とPERの関係を基準に判断するのは、それ相応の土台となるものが必要となります。また、PERの基準は投資家のコンセンサスと言うことができますが、投資家がEPSの何倍かの価値をつけるには、それ相応の土台となるものが必要となるのです。
株式だけでなく金融商品全般に言えることですが、金融商品全般の土台となっているものは「信用」です。信用があるから投資家は金融商品に大事なお金を投資することができるのです。信用のないものに何倍かの価値を投資家がつけるわけはありませんので、PERの土台も投資家の信用であるということができます。
ただ、「信用」というのはかなり曖昧なものです。何か大きな悪材料が出て金融商品に対する「信用」がなくなれば、投資家は容赦なくその金融商品を売ることとなります。それはリーマンショックがいい例です。リーマンショックの時は、CDSという市場が大きくクラッシュしたことにより金融市場全体に大きな影響がでることとなりましたが、CDSという市場は、そもそも信用リスクを取引している市場です。リーマンショックは、リーマン・ブラザーズという投資銀行が破綻したことがフォーカスされましたが、金融市場ではCDSのクラッシュがフォーカスされていました(この詳しい解説は「PER(株価収益率)」と「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)とは」のページを参照してください)。
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